宮之浦岳には、宿で知り合った人たち4人で出発した。
うち一人はバイクで先に出かけ入山も下山も僕たちより早く単独で行動していた。
僕たちは残りの三人で花之江河という湿地帯まで行ったあと、一人の女性は宮之浦岳には一度登ったことがあるということだったので、黒味岳という別の山へ向かうルートに向かった。
僕たちが無事に下山したのが午後2時過ぎだったと思うが4時か5時くらいになっても女性は帰ってこなかった。携帯の番号も聞いていたので、電話してみるが圏外で繋がらない。宿に電話してもう少し待って見て欲しいというので、待っていて6時をすぎても帰ってこない。
あたりはもう暗くなり始めていた。
宿の方からは、とりあえず今日は戻ってきてくれと言われ、代わりに宿の方がその場所で待機することになった。僕たちは、気もそぞろながら宿へ戻った。
次の日の朝食の場にも彼女は現れず宿の人からは、まだ見つからないという話だった。
僕はどこに出かける気もせず、宿に残りぼぉっとしていた。
しばらくして、宿の人から全然違う登山道から下りてきたという連絡があったという話を聞いた。なんでも、遭難して登山道のテープを頼りに道を探していたが、暗くなってきたのでそこで動かずに、明るくなってから下りてきたとのこと。この時は本当に安心した。
そして、3年が経ってその宿に行くと、彼女が働いていた。始め、気づかなかったのだけど「あれだけ迷惑かけて忘れているわけないでしょ」という宿主のあいさつと、前述の話を聞いた嫁さんが「それが彼女なんじゃないの?」というつっこみをして、初めて気づいた。
遭難の時の話をさらに聞いたのだけど、暗くなってきて怖かったので服を被って「周りが暗いんじゃない、服を被ってるから暗いんだ」と思い込ませていたこと、下りてきたらすべての足の指が真っ黒になって回復するまでに半年がかかったこと、それから今年に入るまで怖くて登山には行っていなかったことなどを、話してくれた。
山は、怖い。
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